歯科医師仲間と飲みに行った時のこと。

「いらっしゃいませー」

と、笑顔で明るく元気に接客してくれたお姉さんの口もとから、キラリと光る銀色のブラケットとワイヤーが。

「今の女の子、矯正中だったね」

仲間に話しかけると、

「え？　そうなの？」

「わからなかったなあ」

誰一人気づいたヒトはいませんでした。皆、矯正治療こそしていませんが、歯科医師免許を持った歯医者たちが、です。

人さまの口もとなど、ご本人が気にするほど、他人は見ていないモノなのかもしれません。

（だったら、白いブラケットやワイヤーで矯正したら、いよいよわからないのではないか）

などと思いつつ、その夜はお酒を酌み交わしたのでした。